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前回は Home Assistant(以下 HA)の置き場所——中古 Tiny PC に Proxmox を入れ、VLAN をまたぐデュアル NIC で住まわせるまで——を書きました。 箱は用意できたので、今回はそこに機器を載せます。 メーカーがバラバラの IoT を HA という 1 枚のダッシュボードに束ねるまでの話です。
結論から書くと、Nature・Aqara・CANDY HOUSE(SESAME)・TP-Link(Tapo)・アイリスオーヤマの 5 社の機器を、Cloud API・Matter・Zigbee の 3 経路で HA に集約しました。 そして今回の本題は、当初「Aqara のハブ 1 台で IR も Zigbee もまとめて捌く」つもりだった計画が Matter ブリッジの制約で崩れ、制御は Nature、センシングは Aqara という役割分担(二面分業)に行き着いた経緯です。 前回が「Proxmox は不要と一度は決めたのに覆した」話だったのと同じで、今回も一度立てた設計を自分で取り消しています。
想定読者
- メーカーの違う IoT 機器が増えてきて、HA に集約したい人
- Matter・Zigbee・クラウド連携をどう使い分けるのか、実例で知りたい人
- 「多機能ハブ 1 台で全部やる」構成のメリットと落とし穴を知りたい人
全体 像——制御は Nature、 センシングは Aqara
先に全体像を出します。 うちは機器の役割を 2 つの面で分けています。 エアコンや照明を「動かす」制御面は Nature、温湿度や人の在・不在を「測る」センシング面は Aqara。 そこに玄関の鍵(SESAME)と電力計測(Nature Remo E lite・Tapo)が乗る、という構成です。
| 面 | 主役ベンダー | 担当 | HA への経路 |
|---|---|---|---|
| 制御(IR) | Nature | エアコン・照明・サーキュレーター | Cloud API(HACS 統合) |
| センシング | Aqara | 温湿度・在室・開閉 | Zigbee → Matter ブリッジ |
| 鍵 | CANDY HOUSE | 玄関の施錠・解錠 | Matter ブリッジ(SESAME Hub 3) |
| 電力 | Nature / TP-Link | 住戸全体・コンセント系統別 | Cloud API / Matter |
ひとつだけ、この表を見て気持ち悪いところがあります。 制御の主役である Nature だけがクラウド経由で、センシングと鍵はローカルの Matter で HA と直結している点です。 本当はエアコンの操作こそローカルで完結させたいのですが、そこには後述の事情があります。
なぜわざわざ HA に集約するのか。 各社それぞれ専用アプリがあり、機器単体ならアプリで足ります。 それでも 1 枚に束ねるのは、「部屋の温度が上がったらエアコンを入れる」のように、あるメーカーのセンサーを別メーカーの機器のトリガーにしたいからです。 Aqara の温湿度計の値で Nature のエアコンを動かす——この横断はアプリの中では組めません。 HA はそのための共通の土台になります。
本題 ——Aqara を IR ハブに する 計画が 崩れた
役割分担にたどり着く前、設計段階では違う絵を描いていました。 Aqara の多機能ハブ Aqara Hub M200 は、Zigbee コーディネーター・Thread ボーダールーター・IR ブラスター・スピーカーを 1 台に詰め込んだ欲張りな機械です。 なので「エアコンの IR もこの M200 から飛ばせば、ハブ 1 台で IR もセンサーも捌けて機材が減る」と考えていました。 書斎用に 2 台目まで買うつもりで、部屋割りの表まで引いていたほどです。 気合は入っていました。
この計画が、実運用の検証で 2 つの理由から崩れました。
- M200 のカスタム IR が、Aqara アプリの外に出せなかった。 M200 で学習させたエアコンの IR コマンドは Aqara Home アプリの中では動くのに、Matter ブリッジ越しに HA や Google Home へ公開できませんでした。HA から自動化に組み込めないなら、IR ハブとして使う意味がありません。
- Matter ブリッジがエアコンの除湿モードを落とした。 Aqara のエアコン制御を Matter で HA に渡すと、Matter の温度調節(thermostat)という型に翻訳される過程で、除湿モードが消えてしまう1。梅雨のある日本で除湿が使えないエアコン制御は、正直かなり痛いです。
そこで方針を変えました。
IR 操作系はぜんぶ Nature に寄せ、M200 は Zigbee コーディネーター専任へ降格。
2 台目の M200 は購入を取りやめました。
「多機能ハブ 1 台で全部」という当初のうまみを自分で捨てたわけで、部品が減るどころか Nature を買い足す羽目になったのは、設計者としてちょっと格好がつきません。
ただ、この降格のおかげで役割が綺麗に割れました。
M200 は得意な Zigbee のハブ番に専念し、IR という不得意分野からは手を引く。
結果的に、冒頭の「制御=Nature・センシング=Aqara」という二面分業は、この失敗が連れてきた答えです。
Nature Remo 系——IR 制御の 主役
というわけで、エアコンと照明の制御は Nature が全部持っています。 IR は壁を越えないので、エアコンのある部屋ごとに 1 台ずつ IR ブラスターを置く必要があります。 うちは 3 部屋で 3 台です。
| 機器 | 置き場所 | 担当 |
|---|---|---|
| Nature Remo nano | 書斎 | エアコン + 書斎照明の IR |
| Nature Remo nano | LDK | エアコンの IR(popIn の点灯も) |
| Nature Remo mini(初代 Remo-2W1) | 寝室 | エアコン・照明・サーキュレーターの IR |
書斎と LDK には新しい Nature Remo nano を新調し、初代の Nature Remo mini は寝室に移設しました。 LDK の照明はいまも popIn Aladdin 2 が現役で、その ON/OFF は nano から IR トグルで叩いています(天井のシーリング照明を IR で操作できるのは popIn の地味に便利なところです)。
寝室のサーキュレーター(アイリスオーヤマ PCF-SDC15T)も、この Nature Remo mini に IR を学習させてあります。 IR リモコンの付いた機器なら、メーカーを問わず Nature に覚えさせて HA から回せる。 安いサーキュレーター 1 台でも HA に乗る、というのが IR 統合の間口の広さです。
HA との接続は HACS2 の nature_remo 統合で、Nature のクラウド API 経由です。
ここが冒頭で触れた「制御の主役だけクラウド依存」の正体で、Nature のサーバが落ちるとエアコン操作が効かなくなる弱点があります。
それでも Nature を選んだのは、Matter ブリッジで除湿モードが落ちる Aqara IR よりも、エアコンの全モードを素直に扱えるほうを優先したからです。
クラウド依存という弱点を承知のうえで、機能の素直さを取った格好です。
もうひとつ注意点があります。 IR は一方通行なので、HA 側はエアコンの本当の状態を知りません(最後に送ったコマンドを覚えているだけ)。 「OFF を送った」と「本当に止まった」は別で、この開ループのズレをどう補うかは、次回のオートメーション編の主題になります。
Nature Remo nano(スマートリモコン)
エアコン・照明・サーキュレーターの
Aqara——センシングの 主役
IR から手を引いた M200 は、Zigbee のハブとして働いています。 Aqara の Zigbee センサー類は M200 に紐づき、その M200 を Matter ブリッジとして HA に公開することで、センサーの値がまとめて HA に流れ込みます。
いま載っているセンシングの入口は、各部屋の温湿度計 Aqara 温湿度計 T1 です。 LDK と書斎に 1 台ずつ置き、温度・湿度に加えて絶対湿度や不快指数を HA 側で計算する入力源にしています。 電池式の Zigbee 機器は、とにかく電池が保ちます。この「置いて忘れられる」感じが、センシング面を Aqara に寄せた理由です。
Matter ブリッジ経由なので、センサーの値はローカルでHA に届きます。 制御面の Nature がクラウド依存だったのと対照的に、こちらは Nature のサーバが落ちても影響を受けません。 測る側はローカルで堅く、動かす側はクラウドでも機能優先——この非対称は、さっきの IR ハブ計画の崩壊が結果的に連れてきたバランスです。
Aqara Hub M200
Zigbee コーディネーター + Thread ボーダールーター + IR + スピーカーの
SESAME——玄関の 鍵
玄関の鍵は CANDY HOUSE の SESAME 5 Pro です(この 5 Pro は現在終売で、公式の現行モデルは SESAME 6 Pro に替わっています)。 これを HA につなぐのが SESAME Hub 3 で、Wi-Fi ブリッジと Matter ブリッジを兼ねています。 Hub 3 の Matter ブリッジ経由で、施錠・解錠の状態と操作が HA に上がってきます。
鍵が HA に乗ると、「深夜の解錠を検知して通知する」のように、セキュリティ寄りの自動化の下地になります。 鍵は家の中でいちばんクリティカルな機器なので、まずは状態を HA で確実に見えるようにするところから始めました。 欲張らず、可視化から。 解錠を使ったオートメーションの中身は次回に回します。
電力の 可視化
電力は 2 つの粒度で見ています。 住戸全体のトレンドと、コンセント単位の系統別。
住戸全体は Nature Remo E lite が担います(こちらも終売で、現行は Nature Remo E2 lite です)。 これは B ルート3という、電力メーターから直接データを受け取る仕組みで、家全体の消費電力をリアルタイムに取れます。 エアコン単体の切り分けはできませんが、「いま家全体で何 W 使っているか」が分かるので、主幹が上がりすぎたときの通知に使っています。
コンセント単位は Tapo P110M です。 Matter 対応で電力計測ができ、HA にローカルで載ります。 書斎のデスク・冷蔵庫・Proxmox の 3 系統に挟んで、系統ごとの消費電力を見ています。 エアコン本体はスマートプラグに通していません(家庭用プラグは概ね 1500W 上限で、エアコンは専用回路・専用形状になりがちで安全上不向きなためです)。
Nature Remo E2 lite(電力モニタ)
B ルートで
TP-Link Tapo P110M(電力計測スマートプラグ)
Matter 対応・電力計測付き・HA に
まだ 載っていない 機材
ここまでが「もう載っている」機材です。 束ね終わっていない機材も正直に書いておきます(このあたりは自分の環境で動かして確かめてから、次回にカードを出します)。
- 人感センサーの FP1E は購入済みで、いまは設置待ちです。在室判定の主力にする予定で、次回オートメーション編で HA に組み込みます。
- 窓・ドア開閉センサーは未導入。「窓を開けたまま冷房」を止めるガードに使う予定です。
- カーテン Driver E1 も未導入です。
- popIn Aladdin 2 は LDK 照明としてまだ現役ですが、将来 TV を導入する際に撤去予定。撤去後の LDK 照明はスマートシーリングライトに置き換えます。
まとめ——束ねた 先へ
これで 5 社の機器が HA という 1 枚に乗りました。 振り返ると今回いちばん大きかったのは、新しい機材の導入そのものより、「多機能ハブ 1 台で全部やる」という当初案を捨てて役割分担に切り替えた判断でした。 Matter ブリッジは便利な半面、機器の機能を「共通の型」に翻訳する過程で角が落ちる(除湿モードが消える)ことがある。 そのクセを踏んでから、制御=Nature・センシング=Aqara という住み分けに落ち着いた、という一本の流れでした。
ただ、機器を束ねただけでは家は賢くなりません。 束ねた機器を「どう連動させるか」がスマートホームの本体です。
次回はいよいよオートメーション編。
Aqara の温湿度で Nature のエアコンを動かし、「行ってきます」で家全体が寝る仕組みを組みます。
そこで踏んだ最大の罠——climate.turn_off を送ってもエアコンが止まらない——の話も書きます(IR が一方通行なせいで起きる、開ループの厄介さです)。
それでは、またね。
footnote
-
Matter は複数メーカーのスマートホーム機器を共通規格でつなぐ標準。ブリッジ機器を介すと、各社独自の機能が Matter の標準デバイス型(thermostat など)に翻訳される過程で、規格外の機能(除湿モードなど)が落ちることがある。 ↩
-
HACS(Home Assistant Community Store)は、HA 公式には含まれないコミュニティ製の統合を導入するためのアドオン。
nature_remoのようなサードパーティ統合はここから入れる。 ↩ -
B ルートは、スマートメーターが宅内向けに電力使用量を提供する経路。電力会社への申請で発行される ID/パスワードを使い、対応機器(Nature Remo E lite など)が直接データを受け取る。 ↩